知的財産に係る権利問題に円滑に対応するための著作権法及び商標法の一部を改正する法律
提出者:はわのふ
(あっせん制度の見直しに関する改正)
第一条 著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)の一部を次のように改正する。
第百七条第二項の次に次の一項を加える。
3 第一項の手数料は、金銭の利益に関係しない事件については、政令で定めるところにより、無料とすることができる。
第百八条第二項の次に次の二項を加える。
3 文化庁長官は、第一項の規定について当事者の一方からあつせんの申請があつた場合において他の当事者がこれに同意しなかつたとき、又は前項の規定によりあつせんに付さなかつたときにおいて、特に必要を認めるときは、委員による予備審査に付することができる。
4 前項の予備審査において、委員は、当事者の主張の要点を確かめ、その実情に即するように第百十条第三項に準じた教示をするものとする。
第百十条第二項の次に次の一項を加える。
3 委員は、前項の通知を行うに際し、当事者に対し、法令に違反しない限りにおいて、次章に定める請求の概要のほか、この請求に係る訴え、裁判外紛争解決手続及びその他の解決の手続きを利用することができる旨を教示しなければならない。
(差止請求権の実効性の向上に関する改正)
第二条 著作権法の一部を次のように改正する。
第百十四条の八の次に次の三条を加える。
(付随的差止請求権)
第百十四条の九 第百十二条第一項若しくは第二項又は第百十五条の規定に基づいて請求をし、又はした者は、その請求を認容した裁判所の命令又は確定判決が効力を生じたときに限り、相手方を限定しないで、その請求に係る侵害の停止若しくは予防又は措置を命ずるよう、裁判所に請求することができる。
2 前項の規定は、第百十六条第一項、第百十七条第一項又は第百十八条第一項に係る第百十二条第一項若しくは第二項又は第百十五条の規定に基づく請求をし、又はした者についても準用する。
3 第一項の請求を管轄すべき裁判所は、その請求の認容又は却下を決定しなければならない。
4 前項の決定は、公示送達をし、かつ、その公示があつたことを官報に少なくとも一回掲載することにより、送達したものとみなす。ただし、この送達の効力は、当該の公示があつたことを最初に官報へ掲載した日から起算して二週間(外国にある者については六週間)を経過することによつて生ずるものとする。
5 第一項の請求を却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。
6 第三者による、第一項の請求の認容に基づく効力の自らへの適用に対する訴えの提起は、同項の請求を認容した決定にかかわらず、これを妨げない。
(差止め又は名誉回復に必要な措置の執行請求権)
第百十四条の十 第百十二条第二項、前条第一項(第二項により準用する場合を含む。)又は第百十五条の規定に基づいて請求をし、又はした者は、その請求を認容した仮処分命令又は確定判決が効力を生じたときに限り、相手方を指定して、民法第四百十四条の例により、その請求の内容を実現させるための措置を執行するよう裁判所に請求することができる。
2 前項の請求を管轄すべき裁判所は、その請求の認容又は却下を決定しなければならない。
3 前項の決定により認容した場合であつてもなお、裁判所は、第一項の請求が仮処分に基づくものであつて、かつ、復原の困難な措置を請求するものであると認める場合は、相当の猶予の期間をおいたのち、これを執行することができる。
4 第一項の請求を認容した決定に対しては、執行抗告をすることができる。
(権利行使上の弱者への考慮)
第百十四条の十一 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害に係る事件を管轄する裁判所又は裁判官は、その事件の性質上適当と認める範囲において、次の各号に掲げる場合を考慮しなければならない。
一 著作者又は著作権者の意思に反して、その訴訟の結果が著作物の利用を、実態において過度に制約し得、又はし得ない場合
二 当事者の全部又は一部の意思に反して、その者においてこの法律の規定に基づく請求をし、又はしないことの判断が、権利関係の実態上不当に制約され得る場合
(商標の冒認登録の抑止に関する改正)
第三条 商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第十九号の次に次の一号を加える。
二十 他人の著名かつ未登録の標章と同一又は類似の商標であつて、当該他人による商品又は役務としての誤認を生ずるおそれがあるもの(その他人から承諾を得ているもの及び前各号に掲げるものを除く。)
第四条第三項中「、第十七号又は第十九号」を「、第十七号、第十九号又は第二十号」に改める。
第十二条の二第二項の次に次の三項を加える。
3 特許庁長官は、字句を伝達させ、又は想起させることにより商標の効果を生じるものと認める商標については、その字句を前項に掲げる事項に加えて文字で掲載するほか、一又は二以上のキーワード(当該商標の検索及び閲覧に資する目的で、その商標の称呼又は観念の全部又は一部を簡潔に表した字句をいう。)を掲載することができる。
4 商標登録出願人は、前項のキーワードに著しい誤りを認めるとき、経済産業省令で定めるところにより、特許庁長官に対してそのキーワードの全部又は一部の訂正(撤回を含む。)を書面で請求することができる。
5 特許庁長官は、公衆による当該商標の検索及び閲覧の利便を損なわないものと認める限りにおいて、この請求に基づいて、キーワードを訂正するものとする。
第十八条第五項を同条第六項とし、同条第四項を同条第五項とし、同条第五項中「前項」を「前二項」に改め、同条第三項の次に次の一項を加える。
4 第十二条の二第三項から第五項までの規定は、前項の掲載について準用する。この場合において、同条第三項の規定中「前項」とあるのは「第十八条第三項」と、同条第四項の規定中「商標登録出願人」とあるのは「商標権者」と読み替える。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
(強制執行等に関する経過措置)
第二条 この法律の施行前にした行為に係る仮処分の執行又は強制執行の請求については、なお従前の通りとする。
(著作権法等の一部の適用を停止する法律の施行延期)
第三条 著作権法等の一部の適用を停止する法律(令和四年空想法律 号)附則第一条中「公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日」を「令和六年四月一日以降の範囲において別に法律で定める日」に改める。
-------------- 理 由 --------------
知的財産に係る権利侵害その他の問題に対応するため、著作権法上のあっせん制度を見直し、差止請求権の実効性の向上を図るほか、その商標の性質上登録を受ける権利を持つべきでない者による商標登録を抑止するための規定を整備する必要がある。
これが、この法律案を提出する理由である。
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