ケアラーの支援に関する法案

第1条(目的)

この条例は、ケアラーの支援に関し、基本理念を定め、国の責務並びに国民、事業者及び関係機関の役割を明らかにするとともに、ケアラーの支援に関する施策の基本となる事項を定めることにより、ケアラーの支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって全てのケアラーが健康で文化的な生活を営むことができる社会を実現することを目的とする。

第2条(定義)

この法案において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

一 ケアラー 高齢、身体上又は精神上の障害又は疾病等により援助を必要とする親族、友人その他の身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活上の世話その他の援助を提供する者をいう。

二 ヤングケアラー ケアラーのうち、十八歳未満の者をいう。

三 関係機関 介護、障害者及び障害児の支援、医療、教育、児童の福祉等に関する業務を行い、その業務を通じて日常的にケアラーに関わる可能性がある機関をいう。

四 民間支援団体 ケアラーの支援を行うことを目的とする民間の団体をいう。

第3条(基本理念)

1 ケアラーの支援は、全てのケアラーが個人として尊重され、健康で文化的な生活を営むことができるように行われなければならない。

2 ケアラーの支援は、国、国民、地方自治体、事業者、関係機関、民間支援団体等の多様な主体が相互に連携を図りながら、ケアラーが孤立することのないよう社会全体で支えるように行われなければならない。

3 ヤングケアラーの支援は、ヤングケアラーとしての時期が特に社会において自立的に生きる基礎を培い、人間として基本的な資質を養う重要な時期であることに鑑み、適切な教育の機会を確保し、かつ、心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られるように国や関係機関、学校等は行われなければならない。

第4条(国の責務)

1 国は、前条に定める基本理念(第六条第一項及び第七条第一項において「基本理念」という。)にのっとり、ケアラーの支援に関する施策を総合的かつ計画的に実施するものとする。

2 国は、ケアラーの支援における各地方自治体の役割の重要性に鑑み、地方自治体がケアラーの支援に関する施策を実施する場合には、助言その他の必要な支援を行うものとする。

3 国は、第一項の施策を実施するに当たっては、地方自治体、事業者、関係機関、民間支援団体等と相互に連携を図るものとする。

第5条(国民の役割)

国民は、ケアラーが置かれている状況の認知及びケアラーの支援をヤングケアラーが孤立することのないように十分配慮するとともに、国及び地方自治体が実施するケアラーの支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。

第6条(事業者の役割)

1 事業者は、基本理念にのっとり、ケアラーの支援の必要性についての理解を深め、その事業活動を行うに当たっては、県及び市町村が実施するケアラーの支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。

2 事業者は、雇用する従業員がケアラーである可能性があることを認識するとともに、当該従業員がケアラーであると認められるときは、ケアラーの意向を尊重しつつ、勤務するに当たっての配慮、情報の提供その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

第7条(関係機関の役割)

1 関係機関は、基本理念にのっとり、県及び市町村が実施するケアラーの支援に関する施策に積極的に協力するよう努めるものとする。

2 関係機関は、その業務を通じて日常的にケアラーに関わる可能性がある立場にあることを認識し、関わりのある者がケアラーであると認められるときは、ケアラーの意向を尊重しつつ、ケアラーの健康状態、その置かれている生活環境等を確認し、支援の必要性の把握に努めるものとする。

3 関係機関は、支援を必要とするケアラーに対し、情報の提供、適切な支援機関への案内又は取次ぎその他の必要な支援を行うよう努めるものとする。

第8条(ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関の役割)

1 ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関は、その業務を通じて日常的にヤングケアラーに関わる可能性がある立場にあることを認識し、関わりのある者がヤングケアラーであると認められるときは、ヤングケアラーの意向を尊重しつつ、ヤングケアラーの教育の機会の確保の状況、健康状態、その置かれている生活環境等を確認し、支援の必要性の把握を行うものとする。

2 ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関は、支援を必要とするヤングケアラーからの教育及び福祉に関する相談に応じるとともに、ヤングケアラーに対し、適切な支援機関への案内又は取次ぎその他の必要な支援を可及的速やかに行うものとする。

第9条(ケアラーの支援に関する推進計画)

1 国は、ケアラーの支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための計画(以下この条において「推進計画」という。)を策定するものとする。

2 推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

一 ケアラー及びヤングケアラーの支援に関する基本方針

二 ケアラー及びヤングケアラーの支援に関する具体的施策

三 前二号に掲げるもののほか、ケアラー及びヤングケアラーの支援に関する施策を推進するために必要な事項

3 国は、推進計画を定め、又は変更したときは、遅滞なくこれを公表するものとする。

第10条(広報及び啓発)

国は、広報活動及び啓発活動を通じて、県民、事業者及び関係機関が、ケアラーが置かれている状況、ケアラーの支援の方法等のケアラーの支援等に関する知識を深め、社会全体としてケアラーの支援が推進されるよう必要な施策を講ずるものとする。

第11条(人材の育成)

国は、ケアラーの支援の充実を図るため、相談、助言、日常生活の支援等のケアラーの支援を担う人材を育成するための研修の実施その他の必要な施策を講ずるものとする。

第12条(民間支援団体等による支援の推進)

国は、民間支援団体その他のケアラーを支援している者が適切かつ効果的にケアラーの支援を推進することができるよう情報の提供、助言その他の必要な施策を講ずるものとする。

第13条(体制の整備)

国は、ケアラーの支援を適切に実施するため、ケアラーの支援に関する施策を総合的かつ計画的に実施するために必要な体制及び地方自治体、関係機関、民間支援団体等の相互間の緊密な連携協力体制の整備に努めるものとする。

第14条 (ケアラー手帳の交付)

地方自治体は、ケアラーに対し、その心身の健康状態を継続的に把握し、必要な情報を提供する

ための手帳(以下、ケアラー手帳)を交付し、ケアラーの支援に活用する等、個々のケアラーの事情に応じたきめ細かな支援を総合的かつ効果的に行うために必要な施策 を講ずるものとする。

第15条 (ケアラー支援推進協議会の設置)

目的の達成のために「介護者支援推進計画」の案の作成に関し厚生労働大臣の諮問に応 じ、及び厚生労働大臣に意見を具申するための組織として、

ケアラー、学識者等からなる「ケアラー支援推進協議会」を設置する。

第16条(財政上の措置)

国は、ケアラーの支援に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

空想国会法案データベース「f-Gov」

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